◇無人航空機 飛行情報共有など衝突防止策 新システム、18年度にも運用へ
国土交通省は無人航空機の安全対策として、有人機と無人機、無人機同士の衝突防止対策の構築に向けて、新たなシステムの導入を計画している。無人航空機の飛行情報を関係者と共有できるシステムを構築するもので、2017年度はフィジビリティスタディ、プロトタイプの作成を実施し、18年度にも運用に結びつけたい考えだ。また、GPS機能などを活用して、無人航空機の飛行禁止空域内での飛行を制限し、許可を取得した場合のみ制限を解除できる技術を開発する方針。これについては17年度に可能なものから順次、運用していく計画だ。政府は18年ごろに小型無人機による離島・山間部における荷物配送の本格化、20年代ごろの都市部における荷物配送の本格化を目指している。安全対策に関する制度整備、関係技術開発に取り組む。
無人航空機は「空の産業革命」とも言われる新たな可能性を秘めた技術であり、今後、さまざまな分野で利活用されることが見込まれるとともに、新産業創出や国民生活の利便・質の向上に資することが期待される。その一方、落下事案が発生するなど、安全面における課題が指摘されており、無人航空機の利用促進と安全確保を両立させる制度の構築と運用が重要になっている。
このため、無人航空機の飛行の安全確保に資する先進的な技術開発を推進し、国として更なる安全性の向上を図るとともに、適切な許可承認の実施と飛行の監督体制を確立する。国土交通省航空局は17年度予算要求に2億7900万円(地方航空局分を含む。16年度予算は1000万円)を盛り込んでいる。
有人機・無人機や無人機同士の衝突防止策として、飛行日時や飛行経路・高度といった無人航空機の飛行情報を関係者で共有できるシステムを構築し、18年度にも運用開始を目指す。GPSなどを活用して、航空法で定める飛行禁止区域内での飛行制限に関する安全対策も構築する。
無人航空機を飛行させる人が安全に飛行させるために必要な能力育成プログラムも導入する。国が知識の取得や技量の確保に関する手法を示すことで、無人航空機を飛行させる人の知識や技量の平準化を図る。17年度には、メーカーや関係業界・団体などが実施している講習会に関する調査も実施。気象や関係法令を含めて、求められる知識などを精査。可能なプログラムから順次、実施する。
目視外や夜間飛行、空港周辺の飛行に関する安全対策の構築にも取り組む。補助者の配置と同等の安全性を確保するための技術や機体の視認性を高めるための技術、制御不能に陥った場合でも、第三者などに危害を加えることなく安全な場所に着陸できるような技術に関する評価手法の確立を目指す。17年度には、これに向けた準備、実験などを行う。
無人航空機の許可承認の審査・監督の強化にも取り組む。国交省によると現在、月間1000件前後の申請があり、効率的な審査・確認が重要になっている。そのため無人航空機に係る安全情報の報告・収集などの基準の策定を行うとともに、適切な許可承認の実施と飛行の監督体制確立のため、17年度に有識者委員会の開催を含め、必要な調査を順次、実施する。
例えば、適切な申請および審査体制の確保、実績報告の分析など追跡調査や監督強化策の確立、許可承認基準の適切な見直し・強化(現行の審査基準などの見直しや飛行マニュアルの整備)に取り組む。
なお、政府は18年ごろに小型無人機による離島・山間部における荷物配送を本格化させる仕組みを導入する。さらに20年代ごろには都市部における荷物配送を本格運用できるように、機体の認証制度や操縦者の資格制度などについて早期に検討・整備する方針を示している。
現在は目視外の場合は原則、監視を付けることが承認に際して求められているが、目視外でも監視を付けずに安全を確保する仕組みの導入も目指している。(日刊カーゴ160905)