欧州委員会は「EU航空産業の競争力強化のための戦略」 (COM (2015) 598 final)の中で無人航空機(UAVs)を規制する新しい共通規則の設定を提案した。そして欧州委員会はドローンの使用に関する規則を策定する任務を欧州航空安全機関 (EASA)に委託した。しかし、その後に航空機と無人航空機とのニアミス事案が増加し、ヒースロー空港でのUAVとの衝突と疑われる事案では、後の調査で航空機はUAVではない未確認物体との衝突ではないかという究明が困難であったが、さらなる検討が急がれることになった。
一方でIAGのCEOであるウィリー・ウォルシュ氏は、ドローンの大きさや機能が拡大すれば航空旅客に対して深刻なリスクとなると警告し、ヒースローでの事案は「疑問の余地もなく」新たな規制が必要であることを証明するものだと言明した。ウォルシュ氏はドローンの所有と使用に関して更なる規制を行うことは不可避であるとも言明した。
旅客航空機との鳥類との衝突の衝撃については広範囲の研究がなされてきたが、ドローンがエンジンに吸い込まれたり、航空機の部品を損傷する事故を起こした時の事態については殆ど解明されていない。2015年のアエロ・キネティックス事故調査報告書で示された科学的な事故調査によれば、ドローンがフロントグラスに衝突したり、民間航空機のエンジンに吸い込まれれば重大な被害と経済的な損失を招くことになる。回転翼機のドローンが正面衝突すれば深刻な損傷が発生し、生存は不可能となるからである。
2016年5月4日にEASAはドローンと航空機との衝突リスクの調査を行うタスクフォースを立ち上げたことを発表した。EASAが航空機とエンジンの製造会社の代表者を含むタスクフォースの推進を行う。このタスクフォースではEU加盟国によって収集された発生事案を含む全ての関連事案を検討する。またドローンと航空機との衝突の衝撃に関する現存の関連事案をすべて検討する。
さらに、タスクフォースでは、大型の航空機、ジェネラルアビエーション、ヘリコプターなどの異なるカテゴリーの航空機、およびそれらに関連する設計そして操縦の要求事項などを考慮に入れて、UAVとの衝突の際のフロントグラス、エンジンおよび機体部分などの航空機の脆弱性を研究する。タスクフォースでは例えばフロントグラスなどについて研究を重ね、実物によるテストを行うことも検討している。
タスクフォースのメンバーはEU加盟国、他の関連するステークホルダーおよび外国の専門機関とも相談する。タスクフォースは2016年7月末までに、その結果を公表する予定である。その後タスクフォースはステークホルダーとのワークショップを開催し、その所見や勧告事項の発表と討議を行う。
(欧州コンサル160510)