ブレーキシステムを不作動にした状態での航空機運航

注意点

このSafety Bulletinは助言的な扱いであり、国内外の規定や会社で定められた手順や要件に取って代わるものではありません。

背景

IFALPAは、世界中の航空安全を最高水準にすべく活動しています。プロのパイロットを代表する世界的組織として、IFALPAは、航空産業に影響を与える潜在的なリスクを未然に抽出することで、表面化しそうな安全への懸念を継続的に監視しています。

最近の運航において、ブレーキシステムの一部またはシステム全体を意図的に不作動にした状態で航空機が運航されているケースが見受けられることを、IFALPAは認識しました。航空会社が一時的な措置を必要とする運航上の課題に直面しているということをIFALPAとして認めている一方で、こうした措置が安全性に影響を及ぼすことは決してあってはならないと考えます。

安全への影響

1. ブレーキ効果を抑制すること

ブレーキを不作動にしたり故障を放置することは、着陸時や地上走行中における航空機の減速及び停止能力を著しく低下させ、オーバーランや滑走路逸脱、地上衝突の可能性を招きます。そして乗客や乗員、地上係員の安全が脅かされることになります。

2. 緊急時の対応

緊急時や離陸中止の際にブレーキが機能することは、迅速かつ機能的な避難において極めて重要です。ブレーキが作動しない場合、効率的且つ安全な方法で旅客を避難させる航空機の能力が著しく損なわれる可能性があります。

3. 操縦不能

ブレーキが(部分的に)効かない状態で航空機を操縦した場合、地上走行や着陸時、また地上操作における操作性の低下を招き、滑走路誤進入や他の航空機及び地上にある障害物との衝突などの危険性が高まります。

4. 予期せぬ結果

航空機のシステムを停止させた場合、目に見えない悪影響が生じる可能性があります。航空機がより高度化された技術を取り入れていくことで、システム同士が連動するようになる、或いは正確に機能するために他システムからのデータに依存するようになることが起こってきます。例えば、アンチスキッド(横滑り防止)システムは、ブレーキシステムと対になって車輪の横滑りを防止します。MEL(運用許容基準)に反してシステムを停止させたまま運航した場合、他のシステムに未知なる影響をもたらす可能性があります。

推奨

航空会社は、航空機の整備及び運航に関するものを含め、適用される全ての規則や安全基準を遵守しなければなりません。ブレーキシステムを解除する場合、承認された手順および知識に従い、適切な規制当局の承認がある場合にのみ実施してください。

ブレーキを解除した航空機を運航しようと検討する前に、航空会社は包括的なリスク評価を実施すべきです。この評価では、全ての潜在的な安全の危険性を検討し、リスクを最小限に抑えるために効果的な緩和策を講じる必要があります。

乗客、乗員、及び一般市民の安全は、航空機運航において常に最優先されるべきものでなくてはなりません。ブレーキシステムを解除した状態で航空機を運航することは、重大な安全リスクを負っており、それを過小評価したり無視してはなりません。

IFALPAは、航空会社や規制当局、整備機関を含む全ての利害関係者が協力し、航空機運航にあたって安全基準と最適化を厳格な遵守を確保するように呼びかけています。