空港周辺を無許可飛行するドローン
背景
近年、飛行高度や速度、飛行距離などの性能面で著しく改善されたドローンが一般にますます手頃な価格で手に入るようになっています。その結果、世界中の空港で無許可ドローンが飛行することによる危険性が増大しています。あるデータによると、空港周辺でのドローン活動の頻度は、許可/無許可を問わず大幅に増加しています。例えば、英国だけで毎月、空港周辺におけるドローン操縦が数千件も検出されています。
無許可運航の発生はほとんどが偶発的であり、民間航空に影響はありません。それらの多くは、操縦者が飛行に関する規則に精通していないか、ドローンの制御を喪失しているかに関係しています。ただし、ドローンの運航には混乱を引き起こしたり最悪の場合、危害を加えたりするなど悪意がある場合もあります。
様々な種類のドローン操作を区別して正確に追跡することは極めて困難です。IFALPA、ECA、そしてIFATCAは、2017年に発表された英国の研究で示されているように、増大したドローンの一部が意図的かどうかに関わらず、民間航空機の到着/出発経路に入り込み、壊滅的な結果をもたらす可能性があることを大変懸念しています。
現在の緩和策
世界の幾つかの空港では、無許可ドローンが目撃されたことで一定期間の運航停止を強いられたことにより大混乱に陥りました。この最たる例が、2018年12月19日から21日にかけてロンドン・ガトウィック空港で発生した空港閉鎖です。これによって数百便というフライトがキャンセルされ、10万人以上の乗客が影響を受けました。ストックホルム・アーランダ空港では、空港周辺で無許可ドローンが飛行していたことにより、数度に渡って空港閉鎖されました。こうした空港閉鎖は、財政面や運用面での影響(航空機の行き先変更や乗客の足止め)を伴う一方で、無許可ドローンを止めさせることにはなりません。この方法は持続可能な解決策とは言えないのではないでしょうか。
航空機や空港近辺で飛行する無許可無人機の影響を記したガイダンス資料が、IATAから発行されています。これは、2020年に航空産業全体の問題として取り組みが始まり、ACIやIFALPA、ECA、IFATCA、航空管制機関、航空当局といった関係者が尽力し、IATAが調整者となって作成された文書です。
もう一つ紹介する内容は、無許可ドローンを検出して無効化する技術装置の設置です。こうした機器はロンドン・ガトウィック空港及びロンドン・ヒースロー空港の両方に設置済となっています。機器の種類に応じて無許可ドローンを識別し、追跡し、追い詰め、そしてさらには破壊することさえ可能です。ただし、現時点においてこれらシステムの設計と運用に関する国際基準は存在せず、そのコストゆえ、ほとんどの空港で採用することは難しいのが現状です。さらに言えば、磁気妨害の使用による影響や操縦不能になったドローンによる巻き添え被害による望ましくない結果が起こり得ることについて、過小評価すべきではないでしょう。
見解
IFALPA、ECA、そしてIFATCAは、無許可ドローンを空港周辺で飛行させないことが最大の防護策になると考えています。しかし、(ほとんどではないにしても)多くの場合において、ほとんどの国における現在の法律は、現時点において無許可ドローンが着実に増加しているという事実を見る限り、空港周辺における無許可ドローン飛行の抑止には十分と言えない状況です。
したがってIFALPA、ECA、そしてIFATCAは、無許可ドローンから民間航空を保護するために、規制当局が更なる規制や実践、認定基準と手順、そして違反者に対する適切な罰則を確立し、そして実行することを求めます。
空港周辺でドローンを飛行させることのリスクや意味合いを一般市民に広く教育することを目的として、地域社会に認識してもらうキャンペーンを行なう必要があるでしょう。航空機に対するレーザー照射の被害を減少させることが出来た際にこうしたキャンペーンが寄与したことからも、不注意による空域への侵入防止に寄与することが期待出来ます。
ドローン製造メーカーは、ジオフェンスシステムや登録番号及び/又は電子署名などの開発を通じて安全性の向上に寄与することが期待されます。さらにIFALPA、ECA、IFATCAはドローン検出やドローンへ対抗するための手段などの技術開発を更に進める必要があると考えています。
航空機の飛行経路を妨害する可能性のあるドローンに関する目撃情報は、即時かつ標準化された報告制度を構築する必要があります。それには管制機関や空港当局、地域の警察、その地域を飛行するパイロットを対象とする必要があります。さらには、法執行機関によるフォローアップシムテムが確保される必要があります。
最後にIFALPA、ECA、IFATCAは、航空機の安全を脅かす空港周辺における無許可ドローンの飛行は、ICAO Annex13の「重大インシデント」相当に分類され、関係機関による徹底した調査が行われるべきと考えます。また、その行為に悪意がある場合、ICAO Annex17の「不法行為」相当に分類されるべきと考えます。