ここでは、「疲労管理とFRMS」について詳しくご紹介します。 (rev : 2020.7.26)

はじめに

ICAO標準によると疲労管理をする方法は次の2つがあります。

1.  飛行時間制限による手法(Prescriptive Approach)

SMSで疲労のハザードを管理しながら、管理当局が定めた勤務時間制限で勤務する。

2.  疲労管理の手法 (Performance Based Approach)

当局が承認した疲労管理システム(FRMS)が導入された環境で勤務する。

解説

 平成29年10月1日から、日本において疲労管理が始まりました。各航空会社で「SMSによる疲労ハザードの管理」、「疲労教育の実施」、「疲労した状態で勤務してはならない規定の追加」が新規設定されます。詳細はニュース41-08を参照ください。

 一方、ICAO標準で求められている状態は、「飛行時間制限」と「FRMS」の規定が必要になります。そこで、国土交通省航空局(以下、航空局)は飛行時間制限を取りまとめるべく、「操縦士の疲労調査に関する検討会」において、日本独自の操縦士に関する疲労実態調査と、外国における基準の調査等を行いました(詳細は後述)。

 ALPA Japan/日乗連は、大原記念労働科学研究所と共同で、航空局が疲労実態調査に使用したデバイス(PVT192)と同型のものを使用し、SPアンケートを用いた疲労実態調査を実施しました。そこでは、航空局の調査では不十分と考えられる部分を含めた調査分析作業を行い、調査報告書を作成しました。その内容に基づき、ALPA Japan/日乗連は、航空局の検討会において「意見書」(※1)及び「調査報告書」(※2)を提出し、必要な主張を行いました。

 検討会は令和元(2019)年3月に取りまとめの公表を行い、日本における操縦士の飛行時間制限を同年7月5日から導入することが発表されました。また、令和3(2021)年12月31日まで猶予期間が設定されることも合わせて発表されたことから、令和4(2022)年1月1日から日本における操縦士の疲労管理が本格導入される予定です。検討会は取りまとめの公表を行い、日本において、飛行時間制限が令和1年(2019年)7月5日に導入されることになりました。また、令和3年(2021年)12月31日まで猶予期間が設定され、令和4年1月1日を目途に本格導入される予定です。詳細を下記の航空局のHPに記載しています。

上記検討会は、令和元(2019)年3月末、取りまとめの公表を行いました。詳細は航空局HPに記載されていますが、ここではその概要をご紹介します。

〇現行の操縦士の乗務時間に関する上限基準の見直し(日中帯の2人編成で国際線の場合:連続12時間から10時間へ変更、等)

〇飛行勤務時間(乗務前ブリーフィング等を含む開始から乗務終了までの時間)に関する上限基準の新設(日中帯の2人編成で飛行回数が2回の場合:最大13時間、等)

〇必要な休養時間(飛行勤務前, 定期)の明確化(勤務終了後から次の飛行勤務までの間に少なくとも10時間の休養が必要、等)

〇乗務時間帯、飛行回数、時差等を考慮した基準の設定(時差のある運航後は、時差の大きさに応じた休養時間が必要、等)

 航空局は、日本における操縦士の飛行時間制限を同年7月5日から導入することを発表しました。また、令和3(2021)年12月31日まで猶予期間が設定されることも合わせて発表しています。その結果、令和4(2022)年1月1日から日本における操縦士の疲労管理が本格導入される予定です。

 なお、検討会の取りまとめによると、(1)Cockpit Controlled Rest(CCR:操縦室着座状態での仮眠)、(2)Fatigue Risk Management System(FRMS:疲労リスク管理システム)、そして(3)国際的に航空身体検査基準に適合した睡眠薬の使用、については「今後の検討が必要な課題」としています。

 この上記3つの施策に関しては、既に導入している国もあることから、今後日本でも導入される可能性は十分に考えられます。そのため、これからも必要な主張をしていく予定です。なお、CCRとFRMSについては、すでにALPA Japan/日乗連ポリシーとして確立していますので、詳細はALPA Japan/日乗連ニュース35-44を参照してください。

今後

 日本で導入される飛行時間制限は、EUで取り入れられている基準に近いものになっていますが、これは「超えてはならない最大値」を示したものにすぎません。諸外国では、その基準よりも更に内側で運用され、実際の運航が行われています。そのため、日本でも各航空会社の運航環境に応じ、各々の勤務基準や勤務協定によって適切に規程化されることが必要となります。今後は、各単組での取り組みが重要になってきます。ALPA Japan/日乗連としても、短距離路線の疲労実態調査を継続しており、HUPER委員会を中心に必要な主張ができるよう取り組む予定です。

参考データ

 例として、下記に米国と欧州のFDP (飛行勤務時間) の一例を示します(表1、2)。なお、FDPとは出社時間 (ショーアップ) してから、航空機の目的地到着時間(ブロックイン)までとなります(日本の場合、出社時間から勤務終了時間まで)。また、表3では日本における長距離運航の出社時間の典型例を示しています。

表1:10時出社の場合

注:マルチ/ダブル運航はクラス3休憩施設 (クルーバンク) が条件

米国FAA基準のFDP欧州基準のFDP
シングル運航
(乗員2名)
14時間(飛行時間9時間)13時間
マルチ運航
(乗員3名)
17時間17時間
ダブル運航
(乗員4名)
19時間18時間

表2:22時出社の場合

注:マルチ/ダブル運航はクラス3休憩施設 (クルーバンク) が条件

米国FAA基準のFDP欧州EASA基準のFDP
シングル運航
(乗員2名)
11時間(飛行時間8時間)11時間
マルチ運航
(乗員3名)
15時間17時間
ダブル運航
(乗員4名)
17時間18時間

表3:米国、欧州と日本の基準比較

 米国FAA基準のFDP欧州EASA基準のFDP日本の基準
5レグ 6時出社11時間30分11時間30分時間帯に関わらず
飛行時間8時間 / 勤務時間13時間
4レグ14時出社12時間11時間30分
2レグ23時出社10時間11時間

詳細に関しては下記を参照ください。

参考リンク

FRMS導入の手引書(英語)、及びIFALPA作成のFRMSチェックリスト(日本語)です。以下の内容を参考に、日本におけるFRMS確立に役立てて下さい。

ICAO/IATA/IFALPA 発行の導入手引書
「ICAO/IATA/IFALPA 発行のFRMS導入手引書」
(Fatigue Management Guide for Airline Operators 2nd Edition)
FRMSチェックリスト
IFALPA 作成 加盟組合向け チェックリスト